大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)69号 判決

原告主張の請求の原因事実は当事者間に争いがなく、右事実によれば、本件審決に原告主張の違法な取消事由があることは明らかである。よつて、その取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。

〔編註〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。

請求の原因

原告訴訟代理人は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。

(審決の成立-特許庁における手続)

一 原告は昭和三十四年三月二十日出願し昭和三十八年十二月二十七日登録された登録実用新案第五八六六一〇号(名称「カラー用ブラウン管」)の権利者であるが、右考案につき 被告から登録無効の審判が請求され(同庁昭和四一年審判第五八一四号事件)、特許庁は昭和四十九年二月五日右登録を無効とする旨、主文第一項掲記の審決をし、その謄本は同月二十七日原告に送達された。

(考案の要旨)

二 右考案の要旨は次のとおりである。

四個の支持片の中の一個を辺の中心より若干異なる位置に設けた矩形シヤドウマスクを装着したカラー用ブラウン管。

(審決の理由)

三 そして、右審決は次のように要約される理由を示した。

本件考案の要旨は前項のとおりであるが、米国特許第二八四六六〇八号明細書(以下、「第一引用例」という。)には、丸形カラーブラウン管において丸形のシヤドウマスクを弾性支持片でパネル内面に保持する技術が示され、米国特許第二八〇六一六二号明細書(以下、「第二引用例」という。)には、角形ブラウン管の各辺のほぼ中央にシヤドウマスク用の支持ピンを設け、これにシヤドウマスクを支持する技術が示され、米国特許第二七二七一七二号明細書(以下、「第三引用例」という。)及び米国特許第二八二四九九〇号明細書(以下、「第四引用例」という。)には、丸形シヤドウマスクの支持点をその周辺において不等間隔に選定し、シヤドウマスクの誤装着を防止する技術について記載され、いずれも本件考案の構成要件である「四個の支持片中の一個を辺の中心より若干異なる位置に設けた矩形シヤドウマスク」について直截な開示をしていないにしても、支持片を対称位置から変位させることによりシヤドウマスクの誤装置を防止する点で本件考案と軌を一にしている。ただ、(1)本件考案のものは矩形シヤドウマスクであるのに対し第三、第四引用例に記載のものは丸形シヤドウマスクである点、(2)本件考案のものは支持片を四個有しその中の一個を辺の中心より若干異なる位置に設けているのに対し第三、第四引用例に記載のものは三個の支持片中の二個がそのフレーム周辺において変位して設けられている点で、それぞれ相違するが、第三引用例に記載の技術は丸形の受像管に限らず、断面が矩形状の受像管にも適合できる構造であり(第二欄第五五~五六行)、一方矩形のシヤドウマスク自体も第二引用例に示されているように公知であるから、第三引用例に開示されている技術を矩形シヤドウマスクに適用することは容易に推考することができるところである。すなわち、各辺のほぼ中央部を支持点に選ぶことは第二引用例に示されているから、矩形シヤドウマスクを受像管内に支持するに際しその一部の支持片を中央部から変位させて第三、第四引用例に開示されているのと同趣旨でシヤドウマスクの誤装着の防止をはかる程度のことは当業技術者の極めて容易にできるところである。なお、第三引用例に記載のシヤドウマスクの支持片が三個中二個変位されているのは丸形受像管で三対四の縦横比のテレビジヨン画像を映出するに際し支持点が画像領域外において対称に位置するように配慮したものである点に想到すれば、本件考案のように支持片を一個だけ変位せしめるか、第三、第四引用例のもののように二個変位させるかはシヤドウマスクの形状に起因する単なる設計的選択事項にすぎないものと認められる。したがつて、本件考案は各引用例に記載の技術に基づき当業技術者が極めて容易に推考することができるものと認められ、その登録は旧実用新案法(大正十年法律第九十七号をいう。以下同じ。)第一条の規定に違反してなされたものというべきであるから、実用新案法施行法第二十六条第一項、旧実用新案法第十六条第一項第一号の規定により、これを無効とする。

(審決の取消事由)

四 しかしながら、右審決が第二引用例に角形ブラウン管の各辺のほぼ中央にシヤドウマスク用の支持ピンを設け、これにシヤドウマスクを支持する技術したがつて矩形シヤドウマスクの各辺のほぼ中央部を支持点に選ぶことが開示されていると認定したのは誤りである。すなわち、第二引用例には、シヤドウマスクの各辺のそれぞれの中央に対応する箇所(右審決はこれを角形ブラウン管の各辺のほぼ中央と認定している。)にシヤドウマスク用の支持ピンを合計四個存在させ、これにシヤドウマスクを取付ける技術の開示がないのみならず、同引用例に示された陰極線管は矩形シヤドウマスク自体に支持片を設けているものではなく、ブラウン管外囲器の側壁に設けられた支持ピンにシヤドウマスクの支持枠を直接溶接することによつてシヤドウマスクを支持する構造であつて、本件考案のシヤドウマスク自体の各辺に支持辺を設けた構造と本質的に異なるものである。しかるに、右審決は第二引用例に矩形シヤドウマスクの各辺のほぼ中央部を支持点に選ぶことが開示されているとし、その前提のもとに、右シヤドウマスクを受像管内に支持するに際しその一部の支持片を中央部から変位させてシヤドウマスクの誤装着の防止を計ることが当業技術者の極めて容易に推考し得るものであることを理由に本件考案の登録を無効とすべきものとしたのであつてみれば、違法というべきであるから、取消しを免れない。

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